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募集分科とその研究内容(平成29年度版―平成30年度募集分)

募集分科とその研究内容

*印を付した分科等は、平成30年度は募集しない。
動物学系
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自然人類学、人類進化論、動物系統学、海洋生物学、動物行動学、動物生態学、生態科学I、動物発生学、環境応答遺伝子科学、細胞情報制御学
植物学系
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植物生理学、形態統御学、植物系統分類学、植物分子細胞生物学、植物分子遺伝学、生態科学II
生物物理学系
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構造生理学、理論生物物理学、分子生体情報学、神経生物学、ゲノム情報発現学、分子発生学、*遺伝子情報解析学、形質発現学、分子細胞生物学、生体分子情報学、理論分子生物学、*脂質生体機能学
霊長類学・野生動物系
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進化形態、系統発生、社会生態、思考言語、認知学習、高次脳機能、統合脳システム、ゲノム細胞、感染症、獣医学・動物福祉学、保全遺伝学、野生動物

動物学系

自然人類学
(中務真人、森本直記)
人類の進化、適応、変異に関して、発掘調査、比較解剖学、バイオメカニクス、安定同位体分析などの方法を用いて研究をおこなっている。ケニアと西ユーラシアでの化石発掘、類人猿や初期人類化石の研究、中新世の古環境、霊長類の適応放散、二足歩行や手の操作のバイオメカニクス、国内・国外の古人骨からその生活、行動、疾病等を復原する研究などがある。
人類進化論
(中川尚史)
行動進化の観点から「自然における人間の位置」を明らかにすることを目的としている。ヒトの行動を他の動物、とくに霊長類の行動と比べてホミニゼーション(ヒト化)が起こった過程や人間性の進化を考察する。また、ヒトの進化史の 99%以上は狩猟採集者であったと考えられることから、狩猟採集民を対象とした生態人類学的研究を行っている。霊長類以外の動物や狩猟採集民以外の生業活動についても幅広く研究対象とすることを目指している。主としてフィールドワークの手法を中心に分子生態学的な手法も用いて霊長類の生態、行動、社会に関する資料を収集する。ヒトの調査もインタビューやアンケート による人文社会学的方法よりも、直接人々の行動を観察する方法を重視している。現在進 行中の野外調査には、ゴリラ、チンパンジー、ニホンザルをはじめとしたさまざまな霊長類の生態、社会、行動の研究がある。
動物系統学
(岡本卓、本川雅治[博物館])
主として脊椎動物を対象に、野外調査と博物館標本調査を行い、形態学的、遺伝学的な手法を用いて、種分類体系、種分化、系統進化、形態進化、変異様式、集 団遺伝構造の解明等を視野に入れた分類学、系統学、生物地理学、比較・機能形態学などに関する総合的な自然史学的研究を行っている。
海洋生物学(フィールド科学教育研究センター)
(朝倉彰、久保田信、宮﨑勝己、大和茂之、中野智之)
主として海産動物を対象とした行動生態、個体群生態、群集生態、分類、系統、進化、比較形態、比較発生、生理生態、分子系統、生物地理などの自然史学に関する研究を行う。研究は主に、フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所(和歌山県白浜町)で実施する。現在、各教員は、甲殻類・ウミグモ類などの節足動物、カサガイ類などの軟体動物、ヒドロ虫類などのいわゆる腔腸動物を用いた研究を進めている。
動物行動学
(沼田英治、森哲)
野生動物の行動について、自然史学的なアプローチを重視し、個体をベースとした視点から、野外または飼育下における観察・実験による研究を行う。現在、爬虫類、両生類、昆虫など様々な動物群を対象にして、捕食、防御、繁殖などの行動に関わる機能やメカニズム、あるいは活動の時間設定のしくみの研究を行っている。
動物生態学
(曽田貞滋、渡辺勝敏)
動物を中心とした生態学全般を幅広く扱う。研究テーマも種内の個体間関係を重視した動物個体群の研究、種間関係の解析を中心とした生物群集の研究、生物多様性の維持機構など、幅広く扱う。
本分科のスタッフの研究内容は次の通りである。
1)昆虫を中心とした動物の種多様性の進化的機構・生態的維持機構を解明するための、野外研究・室内実験・分子系統解析等を含めた多角的な研究。(曽田)
2)主に淡水魚類を対象とした生活史・個体群動態・種形成・生物地理・保全に関する野外および集団遺伝的研究。(渡辺)
生態科学I(生態学研究センタ ー)
(中野伸一、木庭啓介、谷内茂雄)
動物に限らず植物・微生物を含めた多様な生物の共存機構および生物多様性の維持・創出機構と保全に関する研究を、陸域・水域・流域のフィールドにおいて、以下のように進めている。
1)保全生態学:生物多様性の保全に関わる生態学的研究。
2)水域の群集生態学:琵琶湖などの構成種(魚類・昆虫・プランクトン・底生動物・バクテリア・ウイルスなど)の生活史・個体群動態・空間利用・栄養資源利用・種間相互作用及び人為的作用を含む環境変動と生物群集とのかかわりの研究。
3)理論生態学:数理モデルを用いた、群集・生態系の構造と動態、生物多様性と生態系機能の関係、人間活動と生態系の相互作用、生態系における進化的過程の研究。研究は生態学研究センター(大津市)において行われる。
動物発生学
(高橋淑子、佐藤ゆたか、田所竜介)
動物の体作りのメカニズムを理解するため、脊椎動物(主にトリ胚)と尾索類(ホヤ)を用いて、遺伝子レベルから個体レベルまで幅広くカバーした研究が進行中である。
1)脊椎動物の器官形成を遺伝子-細胞レベルで解析している。神経形成、血管形成、細胞移動とガン転移、組織幹細胞などをキーワードにして、遺伝子から個体までを繋ぐべく、組織・器官の形成原理を追求する。ニワトリ胚の遺伝子操作と高解像度ライブイメージング解析を組み合わせたアプローチ。(高橋・田所)
2)ホヤのオタマジャクシ型幼生の発生を支配する遺伝子制御ネットワークを、ゲノム科学的視点・システム生物学的視点をとりいれつつ分子生物学的手法によって研究している。それを通じてホヤの胚発生の網羅的かつ統合的な理解と、脊索動物に共通のオタマジャクシ型体制の起源と進化に迫る。(佐藤)
環境応答遺伝子科学
(沼田英治、秋山秋梅、宇高寛子)
動物がさまざまな環境ストレスに対応する機構を、遺伝子レベルで研究する。
1)昆虫などの無脊椎動物が過酷な環境に適応している機構、なかでも季節変化への適応機構に注目する。(沼田・宇高)
2)放射線や活性酸素による DNA の損傷とその修復、突然変異の生成と抑制、および酸化ストレスへの防御機構、細胞死、個体寿命・老化、生殖への影響について研究する。大腸菌、線虫、ヒト培養細胞を用いて分子生物学、生化学、遺伝学、細胞生物学的側面から研究を行う。(秋山)
細胞情報制御学
(原子炉実験所)

(増永慎一郎、田野恵三、真田 悠生)
ヒトが放射線に被爆すると体を構成する細胞において様々な応答反応が誘導される。こうした放射線応答反応は、遺伝子(genetical target)あるいは非遺伝子標的(non-genetical target)に生じた損傷が起源となり一連の情報伝達機構を介して、細胞死、突然変異あるいは細胞がん化などの形質変化として発現される。当分科では修士課程学生に対して、放射線ストレスに対する応答機構の仕組みを分子および細胞レベルで解明するとともにその機能の破綻がどのようにして様々な遺伝子的疾病誘導に関与するかの解明を通じて修士研究の指導をおこなう。研究は原子炉実験所(熊取地区)において行われる。

[博物館]: 京都大学総合博物館

植物学系

植物生理学
(長谷あきら、望月伸悦、鈴木友美)
植物は運動性を欠くため、一見、周囲の環境とは独立して生活しているように見える。しかしながら、植物は独特のやり方で環境変化に応答しており、それ無くして現在の成功はありえない。光は植物にとって最も重要な環境要因のひとつであり、植物はこれに対応するための独自のシステムを発達させてきた。我々は、植物のこのような特徴に着目し、植物の光応答の分子機構について、光受容体の構造と機能の解析、突然変異体を用いた光シグナル伝達機構の研究、遺伝子導入植物を用いた器官・組織間光シグナル伝達の研究、などを、モデル植物であるシロイヌナズナを材料に進めている。
形態統御学
(小山時隆、伊藤照悟)
生体の基本的なシステムの成り立ちに関して、微生物・植物を用いて研究を進めている。昼夜の環境日周変動に同調した概日リズム現象はほとんど全ての生物で見られ、概日時計は普遍的な生体システムとなっている。私達は、高等植物とシアノバクテリアを実験材料に、細胞自律的な概日振動子(細胞時計)の安定性、細胞時計間の相互作用、振動子からの出力システム、周期的外部環境変動に対する生物の時間的統御システムに注目して、分子的・生理学的なアプローチを進めている。さらに、これらの生体システムの進化過程の実証的な解明と、新奇な発振システムの人工的な構築と制御も目指している。
植物系統分類学
(田村実、東浩司、布施静香、永益英敏[博物館])
我々の研究室では、野生植物(種子植物、シダ植物)を材料として、様々な形質情報(外部形態、解剖学的・発生学的形質、生態学的情報、染色体情報、DNA等の分子情報、その他)を総合的に解析し、植物の系統進化過程の科学的解明をめざしている。また、地球上の植物の多様性を明らかにするために熱帯域(東南アジアなど)や温帯域を中心にフィールドワークを積極的に行っている。さらに、野生植物種の集団がどのようにして自然界で維持されているかを理解することをめざして、植物集団内の遺伝構造や集団間の遺伝子流動の解析など集団生物学的研究も合わせて行っている。
植物分子細胞生物学
(嶋田知生、田村謙太郎)
植物細胞のもつ環境適応能力や柔軟性は、オルガネラの機能的分化能力や細胞間コミュニケーション系によって支えられているという観点から、陸上植物の多様な生命機能をオルガネラ(特に、細胞内膜系、小胞輸送系、核、細胞骨格系など)に焦点を当てながら解析している。対象としている生命現象は、環境ストレス応答、生体防御システム、原形質流動、小胞体ネットワーク形成機構、新規ペプチド性因子の生理機能、異種細胞の協調的分化、組織間コミュニケーションなどである。主に用いる手法は、正・逆遺伝学的解析、細胞生物学的解析、分子生物学的解析、生化学的解析の外、質量分析を利用したインタラクトーム解析なども活用する。
植物分子遺伝学
(鹿内利治、槻木竜二、西村芳樹)
植物は様々な環境のなかで生き抜くため、独自の生存戦略を持っている。多細胞植物ではそれは、代謝と発生の巧妙な制御によりもたらされ、その違いが種の分化をもたらしているとも言えるだろう。残念ながら、この制御の分子メカニズムについては、限られた情報しか得られていない。我々は分子遺伝学の発想を基本に分子生物学、生化学、生理学の手法を駆使し、このブラックボックスの解明を目指している。具体的な研究テーマのキーワードとして、光合成、葉緑体、RNA編集、銅イオン恒常性維持、幹細胞分化制御、母性遺伝があげられる。また研究材料は主にシロイヌナズナであるが、イネ、ヒメツリガネゴケ、ゼニゴケ、クラミドモナスなどのモデル植物も目的により使い分けている。研究対象は多岐にわたるが、それぞれの研究分野をつなぐ境界領域の開拓を通して植物を多面的に理解することを目指している。
生態科学II(生態学研究センタ ー)
(工藤洋、高林純示、山内淳、石田厚、川北篤、酒井章子)
植物に限らず動物・微生物を含め、それらの種内・種間関係から生態系、地球環境まで取り扱う。1)野外の植物集団を対象とした分子遺伝学的手法に基づく進化生態学的研究(工藤)、2)昆虫-植物間の相互作用を化学生態学、分子生態学、行動生態学などの手法を用いて解明する研究(高林)、3)生物の進化的な側面を踏まえながら、個体群・生物群集の動態や諸性質を理論的な手法により解明する研究(山内)、4)野外に生育する樹木や実験系で育てた苗木を用い、生態学的なプロセスを、器官や個体レベルの生理生態学的な特性から解明していく研究(石田)、植物および植物と相互作用を持つさまざまな生物の自然史に根ざした生態・進化・多様性に関する研究(川北)、6)生物多様性の創出・維持について、植物の繁殖やそれに関わる動物との相互作用から明らかにする研究(酒井)。研究は生態学研究センター(大津市)において行われる。

[博物館]: 京都大学総合博物館

生物物理学系

構造生理学
(杤尾豪人、土井知子、佐藤智、関山直孝)
細胞の情報伝達機構をタンパク質の立体構造と機能の視点から解明する。特に、自然免疫や炎症応答を制御するシグナル伝達経路や、翻訳後修飾によるタンパク質間相互作用の調節に関わるタンパク質群の解析を行うほか、G蛋白質共役型受容体も研究対象とする。手法としては、核磁気共鳴法(NMR)やX線結晶回折法を用いた立体構造解析に加えて、生化学や分子細胞生物学的な手法を利用し、研究を進める。さらに、細胞内タンパク質の動態を解析するための新規方法論の開発にも取り組み、生命現象を分子レベルで理解することを目指す。
理論生物物理学
(高田彰二、岩部直之)
生体分子の構造機能についての理論およびコンピュータシミュレーション研究あるいは分子進化研究を行う。1)生体分子の構造機能に関する理論的モデリングおよびコンピュータシミュレーションを行う。例えば、蛋白質フォールディング、蛋白質の立体構造予測、膜蛋白質の構造解析、生体分子機械の作動原理、細胞内蛋白質の動態、細胞形態のダイナミクスなど、各自がテーマを選定し、構造インフォマティクス、モデリング、分子動力学およびモンテカルロシミュレーションなどの情報および計算手法を用いて理論研究を行う。2)「形質レベル(形態・行動など)の進化」と「遺伝子レベルの進化」の関連性を理解すること、進化的位置が未解明な分類群を含む「生物の主要な系統関係」を明らかにすることを主な研究目的とする。分子進化学・分子系統学の手法を用いて塩基・アミノ酸配列データの解析を行うとともに、分子細胞生物学の手法を用いた解析および比較ゲノム解析(大規模な塩基・アミノ酸配列の比較解析)なども必要に応じて行う。
分子生体情報学
(今元泰、山下高廣)
視覚の光情報変換機構の分子・細胞レベルでの研究。光受容体を中心にして「機能発現に至る蛋白質の構造変化」や「多様性」を分光学的、生化学的、分子生物学的手法を用いて解析している。さらに、解析により得られた分子レベルでの発見に基づいて、マウスモデル(トランスジェニック動物)を作製し、「色覚や薄明視の分子メカニズム」、「視覚情報処理の細胞間ネットワーク」の解明を目指している。また、視覚の光受容体が典型的なG蛋白質共役型受容体であることから、光受容体をモデル受容体としたG蛋白質共役型受容体の分子設計とその多様化の道筋についても解析している。
神経生物学
(平野丈夫、田川義晃、田中洋光)
哺乳類中枢神経系のニューロン・シナプス機能についての研究および神経回路形成機構の研究。シナプス形成と可塑性についての分子・細胞レベルでの解析と、ニューロン・シナプス機能に異常を示すミュータントマウスを用いての組織・個体レベルの解析を行う。分子生物学、細胞生物学、形態学、細胞・組織・個体レベルの生理学を組み合わせた研究を行い、脳・神経系における情報処理機構および回路形成機構を解析する。
ゲノム情報発現学
(森和俊、岡田徹也、石川時郎)
タンパク質がゲノム情報によって規定されている機能を果たすためには、翻訳され、折り畳まれてそれぞれに固有の高次構造を獲得し、働くべき場所へと輸送されなければならない。特に、タンパク質が正しい立体構造を形成しているかどうかは細胞にとって極めて大きな問題であり、細胞は常にタンパク質の折り畳み状況を監視し、少しでも綻びが生じていると直ちにこれに対処するシステムを確立している。分泌タンパク質や膜タンパク質の高次構造形成の場所である小胞体に焦点を当て、タンパク質の品質管理の分子機構ならびに小胞体から核への細胞内情報伝達を伴う転写誘導の分子機構を分子生物学的、細胞生物学的、生化学的に研究する。細胞レベルの解析にはヒト大腸癌由来細胞HCT116、個体レベルの解析にはメダカを用い、革新的なゲノム編集技術であるTALEN法やCRISPR-Cas9法を駆使した逆遺伝学解析を中心に据えている。
分子発生学
(船山典子)
新規の発生メカニズムをカイメン骨片骨格形成に探る。動物の外部形態の多様性の理解には、骨格形成機構の理解が必須である。カイメン動物は種ごとに異なる非常に多様な形態を持ち、かつ、固着性生物の特徴として同種であって個体ごとに広いバリエーションを持つ。私達は、この様なカイメンの可塑的な成長の基礎となる骨格形成機構は、微細なガラスの針(骨片)という骨格パーツを、細胞が運び、立て、組み上げるという細胞作用の繰り返しに自己組織化という全く新しい発生原理によることを見いだしており、遺伝子発現、ライブイメージング、物理的な力の計測と操作に軸足を置き、独自に実験装置や実験系を工夫、生物学だけでなく物理・数理・工学的な切り口も含めた分野横断的な解析を行う。一方、多細胞動物の起源的な幹細胞システムに関する分子・細胞レベルの解析も行う。
形質発現学(ウイルス研究所)
(大野睦人、谷口一郎)
真核生物のさまざまな遺伝子発現の分子機構をRNAをキーワードとして研究する。主なテーマとして、(1) RNAプロセシングや輸送の分子機構と細胞やウイルスによるその制御、(2)long non-coding RNAとmRNAの間の振り分け機構、(3) 突然変異や損傷で機能喪失したRNAの品質管理機構、など生命科学の基本的かつ中心的課題を生化学・分子生物学・遺伝学的手法を組み合わせて研究する。研究はウイルス研究所(京大病院地区)において行われる。
分子細胞生物学(再生医科学研究所)
(細川暢子)
分子シャペロンによる細胞機能制御、ならびに小胞体におけるタンパク質の品質管理機構を、主として哺乳類動物培養細胞を用いて解析する。1)分子シャペロンによるタンパク質のフォールディング、高次構造形成、サブユニット間の会合、凝集抑制、細胞内輸送の制御といった、タンパク質品質管理機構、2)小胞体でミスフォールドしたタンパク質が分解される小胞体関連分解機構、3)糖鎖を介したタンパク質品質管理制御メカニズムなどに関して、分子レベル、細胞レベルで研究する。研究は再生医科学研究所(京大病院地区)において行われる。
生体分子情報学(化学研究所)
(青山卓史、柘植知彦、加藤真理子)
植物は、遺伝的にプログラムされた形態形成過程をもつだけではなく、環境要因によってそのボディプランを大きく変化させることができる。このような植物特有の可塑的な形態形成における制御機構を分子生物学的および細胞生物学的に解明する。研究手法に関しては、モデル実験植物シロイヌナズナ系において整備された様々な研究資源を最大限に活用する。取扱う研究テーマは、 (1)植物細胞の形をきめるための細胞内シグナル伝達機構、(2)植物ホルモンサイトカイニンによる植物細胞の増殖・分化の制御機構、(3)環境シグナルから植物形態形成制御へとつながるシグナル伝達機構、などである。キーワードとしては、細胞極性、リン脂質シグナル、細胞分化、細胞パターン形成、リン酸欠乏応答、リン酸リレー、エピジェネティック制御、光形態形成、タンパク質分解制御、mRNA代謝制御などである。研究は化学研究所(宇治市)で行われる。
理論分子生物学(化学研究所)
(緒方博之、五斗進)
最新の超大規模生命データを通して、分子から地球環境までの視点で、生命の多様性・生物機能の発現と進化を解明するための理論的・計算機科学的研究(バイオインフォマテ ィクス研究)を行う。主な研究テーマは、1)真核生物に感染する「(その複雑さで細胞生命に比する)巨大ウイルス」のゲノム解析、2)海洋微生物メタゲノム解析による、生態 系における種間相互作用・生態系と環境との相互作用の解明、3)ゲノム資源の医療・創薬・産業への応用を目指した情報技術とデータベース開発である。研究は化学研究所(宇治市)で行われる。

霊長類学野生動物

霊長類学・野生動物系の分科については、霊長類研究所(愛知県犬山市)で研究が行われる。但し、野生動物分科は、吉田地区の野生動物研究センターで研究を行う。また、感染症分科については吉田地区のウイルス研究所で研究を行う。

進化形態
(濱田穣、平﨑鋭矢、伊藤毅)
霊長類の身体形態の多様性を機能適応・個体発生・系統発生の視点から研究する。主として動物比較解剖学、比較運動学、バイオメカニクス、哺乳類学、生物地理学、古生物学などから得られた知見を駆使し、霊長類の形態がもつ機能や変異、生活史や成長・加齢様式の変化、進化史、ロコモーションの進化と適応といった主題について研究を進めている。実験、計測、シミュレーションといった室内での研究にとどまらず、国内外で霊長類を対象にした野外調査も実施している。
系統発生
(高井正成、西村剛、江木直子)
霊長類の系統進化に関する学際的な総合研究を行っている。霊長類のみならずさまざまな哺乳類化石を対象として、国内外での発掘調査や形態比較、同位体比分析による古環境復元、CTなどを用いた画像分析、工学的な手法を取り入れた機能形態学的分析など、多様なアプローチで研究を進めている。古生物学や地質学、生物地理学、地球化学、機能形態学などの広範な知見を統合して、大規模な気候・環境と動植物相の変動との関連性を検討し、その中での霊長類の進化プロセスを明らかにしようとしている。
社会生態
(古賀章彦、湯本貴和、Fred Bercovitch、Michael A. Huffman、半谷吾郎、橋本千絵、辻大和)
自然環境に生息する各種霊長類を主な対象とし、その土地利用と採食、性行動と繁殖、社会行動とコミュニケーション、自己治療活動、文化的行動の獲得と伝搬、社会構造、個体群動態等を環境との関係において解明する。また、霊長類における保全生物学の確立をめざす。国内やアフリカ・アジアの各種霊長類生息地に調査地を設け、個体識別に基づく長期継続研究を進めている。野外研究を中心に、飼育集団の観察や実験室での遺伝学・生理生化学的分析も含めて研究を進めている。
思考言語
(友永雅己、林美里、足立幾磨)
チンパンジーをはじめ、ヒトを含めた各種霊長類における知性を、比較認知科学という視点から研究する。感覚・知覚・思考・言語・道具使用といったテーマについて主に一個体を対象とした研究から、コミュニケーション・模倣・欺き・他者の心の理解・文化伝播などの社会的知性、それらの認知機能の発達的変化まで、研究対象は多岐にわたる。実験室における実験にとどまらず、野外観察や野外実験を通じて多様な側面から研究をおこなう。
認知学習
(正高信男、後藤幸織、香田啓貴)
ヒトを含む霊長類における認知機能やコミュニケーション、精神疾患や発達障害のメカニズムについて、認知科学や比較行動学、神経科学の手法を用いて研究をおこなっている。一つのテーマとして音声―聴覚系の問題が取り扱われているが、それに限定せず、実験室における行動実験から野外における行動観察まで、幅広いテーマの研究が進行している。また別のテーマとして、ヒトやサルを対象とした脳機能画像の研究、精神疾患や発達障害の生物学的メカニズムの解明やこのような脳機能障害が進化の過程でヒトでどのように派生してきたのかを動物モデル等を用いて研究をおこなっている。
高次脳機能
(中村克樹、宮地重弘、脇田真清)
ヒトを含む霊長類における感覚・認知・記憶・情動さらにはコミュニケーションといった機能を神経科学的に研究している。具体的には、サルを対象として、行動そのものを対象とした行動学的研究、ニューロンの電気活動を記録・解析する神経生理学的研究、神経伝達物質/ホルモンやその関連物質が行動に及ぼす影響を解析する神経薬理学的研究、脳内の神経ネットワークの構造を調べる神経解剖学的研究などを行っている。また、ヒトを対象として、fMRIやEEG等を用いた脳機能イメージング研究や発達研究も行っている。
統合脳システム
(高田昌彦、大石高生、井上謙一)
神経解剖学的、神経生理学的、神経行動学的、および分子生物学的手法を統合した多面的アプローチにより、霊長類の脳を構成する複雑かつ精緻な神経回路(ネットワーク)の構造と機能を探求し、それを基盤にして獲得される多様な脳機能をシステム的に理解することを目指している。特に、行動の発現と制御に関わる大脳皮質、大脳基底核、小脳を巡るネットワークの動作原理と機能的役割を解明し、運動機能や認知機能などの高次脳機能とパーキンソン病や統合失調症などの精神・神経疾患の発現メカニズムに迫りたいと考えている。これを実現するため、当分科では、ウイルスベクターによる遺伝子導入技術を駆使して、特定のネットワークを形成する神経細胞に選択的な遺伝子操作を加えた遺伝子改変サルモデルを開発・作出し、このような独創的モデル動物を用いた先端的研究を推進している。また、ゲノム解析をとおして霊長類の脳に特異的な遺伝子発現プロファイルを探索し、発達、可塑性、老化のメカニズム解明をテーマにした融合的研究を展開している。
ゲノム細胞
(平井啓久、岡本宗裕、古賀章彦、今井啓雄、今村公紀、木下こづえ)
霊長類(ヒトを含む)の進化、行動特性、環境応答、繁殖について、実験と理論の両面から研究する。霊長類の特性を総合的に解明することが目標である。現在行われている研究は、以下のとおりである。(1) ヒトとチンパンジー、マカク、コロブス、マーモセットなどのゲノムの多様性に基づいた味覚、嗅覚、視覚などの GPCR 型感覚受容体の研究と環境適応、(2) iPS 細胞などの幹細胞や生殖細胞の培養と発生・分化、およびエピジェネティク制御機構、(3) 反復配列や転移因子が引き起こすゲノム構造の大規模な変化、(4) 寄生虫やウイルスなどの病原体とその宿主の共進化に関わる分子メカニズム、(5) ホルモン分析や配偶子保存などによるさまざまな希少霊長類における保全繁殖。取扱う対象は階層を超えて DNA、RNA、タンパク質、細胞、組織、個体、フィールドに及ぶ。学生からの提案による新しい研究計画も歓迎し、積極的に推進する。
感染症
(明里宏文)
グローバル化や地球環境の変化は新興再興感染症の出現を引き起こしている。特に難治性ウイルス感染症の拡散は人類にとって大きな脅威となっている。我々は難治性ウイルス感染症の中でも特にAIDSやC型肝炎に焦点を当て、独自に樹立した新期霊長類モデルを用いて免疫機構からの回避、長期持続感染、さらに病態発現に至る機序の解明を目指すとともに、その根治を目指した応用研究を展開している。
獣医学・動物福祉学
(鈴木樹理、宮部貴子)
ヒト以外の霊長類を対象とした実験動物学で、サルそのものの実験動物としての比較生物学的特徴の解析をおこなう。特に、成長発達や自然発症疾患などの領域について、種や年齢、環境による違いとその意義に関する研究と、麻酔や痛みに関する基礎研究、麻酔・疼痛管理法の洗練に関する研究、ストレスの評価から環境エンリッチメントにわたる動物福祉に関する研究をおこなう。
保全遺伝学
(川本芳、田中洋之)
(1) 絶滅が危惧される大型類人猿、(2) 農業被害軽減のため個体群管理が必要な野生ニホンザル、(3) 交雑により種の多様性を破壊するマカクの外来種や交雑種、(4) 遺伝管理が必要な飼育個体群、を対象に、集団遺伝学および分子系統学に基づく保全遺伝学研究を行っている。また、主にアジア産霊長類を対象に、保全の基礎となる系統進化や地域分化に関する遺伝学的研究も進めている。
野生動物
(伊谷原一、幸島司郎、村山美穂、平田聡、杉浦秀樹、中村美知夫)
野生動物、特に絶滅が危惧される野生動物を対象に、フィールドワークやラボワークを通じて、集団から個体、さらに遺伝子にいたる多様な解析手法を用いて、保全生物学、動物行動学、認知科学、ゲノム科学など、幅広い分野の基礎研究を行う。野生動物の自然生息地での暮らしを守り、飼育下での健康と長寿に貢献すること、人間を含めた自然への理解を深めることを目的に、動物園・水族館と連携した国際的研究を推進する。自由な研究環境の中で、新たな学問「野生動物保全学」「動物園科学」「自然学」などの創生を目指す。