ゲノム情報発現学

基幹講座

情報分子細胞学講座 ゲノム情報分野

スタッフ

森 和俊

職位
教授
部屋
理学部1号館322号室
Phone
075-753-4067
Fax
075-753-3718
Email
mori(at mark)upr.biophys.kyoto-u.ac.jp

岡田 徹也

職位
助教
部屋
理学部1号館325号室
Phone
075-753-4201
Fax
075-753-3718
Email
tokada(at mark)upr.biophys.kyoto-u.ac.jp

陳 炳碩

職位
特定助教
部屋
理学部1号館315号室
Phone
075-753-4202
Fax
075-753-3718
Email
bjin(at mark)upr.biophys.kyoto-u.ac.jp

研究内容

タンパク質がゲノム情報によって規定されている機能を果たすためにはその立体構造が正しくなければなりません。私たちの研究室では、分泌タンパク質や膜タンパク質の高次構造形成の場である小胞体を研究対象として、「タンパク質の形がおかしくなったときに細胞はどう対応するか」を基本命題として解析しています。

図を一見してわかるように、細胞は複数の対処法を確立しており、それぞれの応答機構が実にダイナミックに制御されています。さらに細胞はこれらの機構をうまく使い分けて小胞体の恒常性を維持していることがわかってきました。その理解に私たちの研究成果が大きく貢献しています。

今後、小胞体ストレス応答、小胞体関連分解、小胞体ストレス起因性アポトーシスの分子機構をより詳細に解明するとともに、タンパク質の構造が異常になったという極めて曖昧な情報を細胞はどうやって捉えるのかという感知の問題を明らかにしたいと考えています。また、応答できなくなるとどんな不都合が生じるのか、培養細胞や脊椎動物モデルであるメダカのゲノムを編集して解析しています。小胞体ストレスと疾患との関連についても解析しています。

小胞体ストレス応答

小胞体に構造異常タンパク質が蓄積すると

(1) 翻訳抑制
翻訳を全般的に抑制して、新生タンパク質がそれ以上小胞体内へ送り込まれないようにし、小胞体内の負荷を軽減します。小胞体ストレスセンサー PERK が翻訳開始因子 eIF2-α をリン酸化することによって翻訳が一時的に停止します。

(2)折り畳み促進
小胞体シャペロンを転写誘導して小胞体内のフォールディング容量を増大させ、構造異常タンパク質の修復に努めます。小胞体ストレスセンサー ATF6 がゴルジ体へ移行し、プロテアーゼ S1P と S2P による連続切断を受け、その細胞質側領域が核へ移行して活性型の転写因子 pATF6(N) として働き、小胞体シャペロンを転写誘導します。

(3)小胞体関連分解
構造異常タンパク質を小胞体から引き抜く装置を転写誘導し、引き出されたタンパク質をサイトゾルでユビキチン化し、26S プロテアソームにより効率よく分解します。小胞体ストレスセンサー IRE1 が下流の転写因子をコードする XBP1 mRNA のスプライシング反応を開始し、生じた活性型の転写因子 pXBP1(S) が pATF6(N) とヘテロダイマーを形成して、小胞体関連分解構成因子を転写誘導します。

(4)アポトーシス
上記(1)〜(3)の対応でも恒常性を維持できない場合、細胞死を選択します。その分子機構には諸説ありますが、未解明と考えています。